この度、(公社)農業農村工学会が2022年5月9日の学会賞選考委員会において、下記業績が農業農村工学に関する歴史・ 文化を広く世に紹介し、或いは研究分析等を行ったとして、NPO法人 辰巳用水にまなぶ会、辰巳用水土地改良区が2022年度の農業農村工学会賞に選定されました。

 受賞名:歴史・文化賞
 受賞者:NPO法人 辰巳用水にまなぶ会、辰巳用水土地改良区
 業績名:城下町金沢の遺産「辰巳用水」の歴史・文化を継承・保全する活動

 



推薦理由
 「辰巳用水にまなぶ会」は「辰巳用水」の将来への継承を目的として2014年に発足した非営利団体である。
1632年に犀川を取水源として加賀藩前田家の命によって作られ、今も金沢の中心部を流れる辰巳用水は、金沢市民の生活風景に溶け込んでいる。一方で、その歴史や管理には漠然とした印象しかない市民がほとんどである。近年、辰巳用水を維持管理してきた方々も高齢となり、用水の維持管理の継承が大きな課題となってきていた。

 「辰巳用水にまなぶ会」はまず、永年にわたり辰巳用水の維持管理に携わってきた辰巳用水土地改良区参事の畦地實さんから聞き取り調査をし、文献探索や現地調査も行って、戦後から今日までの辰巳用水の維持管理の現場の奮闘をその歴史とともに明らかにした。この成果は「城下町金沢の遺産 辰巳用水を守る」という著書によって広く公開されている。本書の帯には、元農業土木学会長・元石川県立大学長・日本学士院会員である丸山利輔先生の推薦文がある。

 また、これらの調査は2018年に土木遺産に認定される際にも大きく貢献した。

 さらに、受賞候補団体である辰巳用水にまなぶ会及び辰巳用水土地改良区は、維持管理から継承までより深い市民の理解と協力が得られるように以下の活動を行っている。

  • ① 用水の調査的研究活動の継続
  • ② 歴史用水として教育活動に利用されていることから、現地見学会や維持活動の体験、用水生物調査、出前講座、生涯学習講座の実施、オンラインを使っての情報発信など
  • ③ 関係資料等のデーターベース化

 このように辰巳用水の長い歴史と伝統に学び、金沢の「まち」、「ひと」、「自然」の調和を目指している点が単なる用水研究を超えた新しい視点である。よって学会の歴史・文化賞に相応しいと考えられ、ここに推薦する。
 
推薦者:石川県立大学生物資源環境学部教授 一恩英二




特別講演
 2022年度(第71回)農業農村工学会は、8月30日(火)に石川県地場産業振興センター(石川県金沢市)で開会され、開会式後特別講演が行われました。

 特別講演は「辰巳用水にまなぶ会」副理事長で金沢大学名誉教授の北浦 勝が「金沢の遺産 辰巳用水について考える」と題して講演しました。


コメントを残す

辰巳用水探訪ウェブサイト